秋の味覚を器で楽しむ ― 土瓶蒸しの魅力

器と料理で感じる秋 ― 土瓶蒸しのすすめ
九月に入ると、少しずつ空気がやわらぎ、季節の移ろいを感じられるようになりますね。秋といえば「食欲の秋」。美味しいものが増えてくるこの時期、せっかくなら旬を感じる料理で季節を楽しみたいものです。
その代表格といえば「土瓶蒸し」。小さな急須のような陶器に、松茸や海老、鶏肉、銀杏などを入れて蒸し上げる料理です。ふたを開けた瞬間にふわっと広がる香りは、まさに“秋のごちそう”。まずはすだちをひと絞りしてお出汁を味わい、それから中の具材を一つひとつ楽しむ――そんな丁寧な食べ方が、気持ちまで豊かにしてくれます。
そして欠かせないのが「土瓶」という器。急須のようでいて、料理のために工夫された形はとても愛らしく、土の温もりを感じられます。保温性が高く、具材の旨味を逃がさずぎゅっと閉じ込めてくれるのも魅力。手仕事ならではの釉薬の色合いや、取っ手の編み込みの表情もひとつひとつ違っていて、器そのものが小さな芸術品のようです。
もちろん、松茸が手に入らなくても大丈夫。舞茸やしめじを使えば、家庭でも香り豊かな土瓶蒸しが楽しめます。少しの工夫で、普段の食卓がぐっと季節感のあるものに変わりますよ。
忙しい毎日の中で、土瓶蒸しのような“ひと手間かけた料理”は、心のゆとりを思い出させてくれる存在かもしれません。お気に入りの器で味わう秋のごちそう、今年はぜひ体験してみてください。
コラム:おうちで楽しむ土瓶蒸しレシピ
お店でいただくイメージの強い土瓶蒸しですが、実は家庭でも工夫すれば楽しめます。松茸がなくても舞茸やしめじで十分。お出汁に鶏肉や海老、銀杏を加え、小さな急須や耐熱容器に入れて蒸せば、立派な一品になります。
【基本の作り方】
- 昆布とかつおでとった出汁を、薄口しょうゆ・みりん・塩でごく薄めに調味する。
- 鶏肉や海老、きのこなど具材を下ごしらえして土瓶に入れる。
- 出汁を注ぎ、ふたをして蒸し器で10分ほど蒸す。
- 出来上がったら三つ葉を添え、すだちを絞ってまずはお出汁をひと口。
香り豊かな蒸し汁と具材を少しずつ味わえば、いつもの食卓がぐっと秋らしくなります。お気に入りの器で、ぜひ試してみてください。